39その時、誰かの気配に「ビシャッ」という何かを切り裂きしぶかせる音が静寂を破った。ちゅう秋がスポットライトの灯りを相手にむける。その灯りに照された犯人は「プレイボーイ」ではなく、血塗れの割烹着に身を包んだ「処女」だった。「そういうことか」と僕らの側から立ち上がった男は「プレイボーイ」と両手を拘束された「朴念仁」「あばずれ」その二人を逃がさない「覆面刑事」だった。
ライトに照された「処女」は無惨な土鳩の死骸と刺身包丁を落とした。血塗られた彼女は「どうして」と拘束された神主だけを見て発音していた。走馬燈の様に彼女とすごしたあの秘密の時間が目の前の虐殺犯と交互に脳裏を去来する。意味が解らない混乱した僕をおいて、ちゅう秋は言った。「君の片想いの相手、神主は婦女暴行教唆犯として掴まったよ」「ホストに君の初めてを奪うよう祈祷の後、依頼したと自白したよ」ちゅう秋は[悲劇を突きつけられた虐殺犯]である彼女を傷つける様に言った。「だから血塗られた割烹着を燃やしていたのか」「プレイボーイ」が怒鳴る。それを「朴念仁」と「あばずれ」を拘束している刑事が押さえる。「本当に」と言う「処女」は「朴念仁」の顔から本当の気持ちをくもうとした。黙る「朴念仁」を代弁するちゅう秋は冷酷に言った。「「いつまでも変わらない君で居て。僕にはそのままの君で居てください」という神主のエゴが必死で努力しても君には演じられなかったろう」「だから何?」と「処女」は吠えた。それを見て苦しそうに必死で言葉を探す「朴念仁」が「僕らの関係は永遠に清いまま」「だって僕が好きなのは神様を愛する僕自身だけだから。なのに」「子供だった君はどんどん素敵になって僕を壊したんだ」いつもにこやかな「朴念仁」は苦しそうに呻いた。「そうだ。僕は神主に君の初めてを愛する様に依頼された。まぁ僕は実際君にイカれていたんだけど」「プレイボーイ」が続けた。ちゅう秋は二人の発言後「処女」に自分の推理が合ってるか確認する様に詰問した。「バージンロスの恐怖を殺す為に、土鳩達に八つ当りしたんだな」鬼の様な形相で責めるちゅう秋に「違う。鳩達は愛する自分の一部だからホストさんではなく神主さんに口説かれたいという卑しい私を罰していただけ」叫ぶ彼女に、正気を取り戻した僕は、ちゅう秋の側をすり抜けて、近づき、激しく彼女の頬を叩いた。「土鳩達全羽と君に騙された僕に謝れ」「人生をかけて償え」と僕は激しく怒鳴った。うちひしがれた彼女に今度は「プレイボーイ」が「一夜の戯れを受入れ、欲情しなくなる神主と永遠に友達面してたら良かったんだ」その酷い内容に拘束された「あばずれ」が「バージンロスを玩具にするな」と吠えた。気が殺がれた「プレイボーイ」が黙ると「朴念仁」が「僕が全部悪かったんだ。本当に本当に申し訳なかった」と一筋の涙をたらした。それを見て彼女は土鳩達と僕に何か囁いた。声は聞こえなかったが唇の形は「ごめんなさい」に僕には見えた。