23彼は言う。「貴女が好きです。僕は貴女に強い恋をしてます」「私は男の人と恋をする気はありません」と彼女。僕なら涙まみれになる即答に彼はは続ける。「結婚で貴女を束縛する気はありません。僕はただ貴女が1番美しい瞬間を僕だけのモノにしたい」彼は続ける。「一度でいいから今の貴女と今の1番美しい貴女と契りたいのです」「貴女にはもう少しだけ余裕があるかもしれませんが、こんな触れるだけで壊れそうな繊細な貴女を愛せる僕の限界はもうじき枯れてしまいます」「だから今の貴女を今の僕に一夜だけください」「僕はそうこの神社に祈願しました」と彼は言い終えた。「何故?」と彼女は言った。「プレイボーイ」の卑下した愛の囁きにドキドキする僕は続きをどこか楽しみにしていた。「1度しか愛でないからこそ覚え続けている恋がある」「貴女は女性だから知らないと思いますが男性の身体には花が枯れる様に速く終わりが来ます」「僕はもうじき男性として枯れます」「その最高のチャンスを1番美しい貴女との温もりで終わりにしたいのです」そんな僕も酔っぱらってしまいそうな言葉に彼女は問う「どうして」と。言葉足らずな彼女の言葉に、戸惑いながら「貴女だから貴女だから僕は貴女の初めてだけでいいから、貴女の人生を束縛しようという醜い僕を殺せるくらい貴女だけだから、もう今想う本音はただそれだけなのです」色気の満ち溢れたひざまづく様な恋の囁きに僕は彼を犯罪者だと認識しながらも、何かが負けたと涙を伝わせた。
でも「私は恋愛してはいけない運命にあるのです」「それは誰にも覆す事はできません」「貴方が他の誰かにうつり哀しみを覚える様な事が奇跡的にあったとしても私はこの運命をまっとうしてみせます」彼女は泣き止まない子供をあやすかの様に言った。
土鳩達が餌をねだり二人の近しい距離を阻む。そして餌をついばみ終えた土鳩達はねぐらへと戻る。止めることを知らない涙を拭う僕と違い彼は最後にこう聴いた。「禁断の恋を貴女もしてるのですか?」落とせない女は居ないだろうイケボな質問は激しい嫉妬をみじんも感じさせなかった。「貴方の好きな様に」想ってくださいと彼女は言った。その時、神社の主である神主が鳥居をまたいだ。常に冷静だった彼女の顔が一瞬ほころんだ。それを見のがさなかった彼と僕は彼女の秘めたる想いに気がつき、呑気に何か聞いてくる「朴念仁」に最大のロスを感じた僕と違い「プレイボーイ」は「また来ます。決して諦めません」と弱々しく言うと彼女を目に焼きつける様に真摯に見つめ鳥居を出ていった。空気の読めない「朴念仁」に「処女」は学生らしい真面目な顔で「今日は早くひけたのですね」と言った。確信した想いに僕は涙を拭い暗くなる日暮れに顔を隠し「後は神主さんに任せます」と言って鳥居をまたいだ。残された二人が激しい恋心の告白など無かった様に落ち着いた空気を醸し出してゆくのに僕は耐えられなかったから。