母の言葉に、一瞬動きが止まる。
だが、すぐに脳の信号をキャッチし、椅子を引きながら答える。
「これくらい、普通だって」
目の前には目玉焼きとベーコン。机の中央には、トースターで焼かれた食パンが重ねられている。
いただきます、と小さく手を合わせて、箸を取る。
「え〜何もしなくても可愛いのに」
不満ありげに頬を膨らませ、両手にスープカップを持ちながらキッチンから出てくる。
「そうだぞ、ミズキはそのままで可愛いんだ」
私の目の前の席に腰を下ろし、母を擁護する形で会話に入り込む父親。
その隣の椅子に座り、私にスープカップを渡す母親。
中身はいつものコーンクリームスープだ。
「亮ちゃんの言う通り。ありのままのミズキが一番可愛いんだから」
受け取ったスープに口をあて、熱く語る母親と目が合う。
一瞬、間を開けてパッと目を逸らす。
「、、ありのまま、ね」
そのまま目を合わせていたら、見透かされそうだ。
本当の理由があることを。
「それで変な男がついてくるかもしれないんだぞっ」
うんうん、と自分に言い聞かせるように頷きながら、食パンを頬張る父。
そんな旦那を横目に見て、彼の心を読むように冷たく言い放つ。
「亮ちゃん。そういう論点じゃないでしょ」
「ギクっ」
その効果音、わざわざ言わなくても。
見るからに動揺した父親が、そんな言葉を発し、私はクスリと笑い、母は溜息を吐いた。
「そっ、そういえば、俺のスープは!?」
手元に自分の分のスープが無いと気づいた彼は、慌てふためく。