二人を見送って、朝のスキンケアが終了したら、再び自分の部屋に戻ってお着替え。
白のカットソーシャツに、珍しい灰色のプリーツスカート。
首元には無地の赤ネクタイを結ぶ。
左胸に校章がついた真っ黒のブレザーに袖を通して、一息つく。
クローゼットからブレザーと同色の靴下を手に取り、足首まで伸ばす。
そしてメイクポーチを手に取り、机の上に鏡を立てかける。
流れ作業の如く、すいすいと化粧を進める。
アイラインを濃く引いて、リップは少しオレンジがかった紅色を唇に乗せた。
次は髪の毛だ。
毛先だけ癖がかった栗色の髪を、櫛でとく。
机の引き出しからヘアアイロンを取り出して、
癖毛がなくなるように、ピーンと伸ばした。
最後にワックスをつけて固めて、完成。
「よしっ」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、
前日に用意していたスクールバッグを肩にかける。
ここまで所要時間30分。
階段の下から、美味しそうな匂いが立ちあがる。
その匂いに釣られるように部屋を出て、隣の部屋、両親の寝室を通り過ぎ、階段を下りる。
リビングの扉を開けると、キッチンに立つ母親と、カウンターからダイニングテーブルへと皿を並べる父親が目に入る。
二人は私の存在に気づき、それぞれ声を張る。
「朝ご飯できてるぞ」と、父親。
「あら、ちょっと化粧濃すぎじゃない?」と口を尖らせる母親。