(あ、そういえば…)



だが、その姿を見て、こんな追及の場にも関わらず、ふと俺は…とあることを思い出した。

親父に話したいことがあったんだ。



「…あ、親父、あの」

「ん?」



フラッと追及の場を離れ、取り敢えず顔だけ出して書斎に戻ろうとする親父の方へ駆け寄る。

親父は俺の方をチラッと見るが、足を止めることはしなかった。

なので、さりげなーくその後ろに着いていく。

上手いこと自然にその場から逃げたというカタチになるが。

「あ、ちょっと…」「逃げましたネ」と、俺を引き留めようとする声が、背中の方から聞こえるが、ヒヤッとしながらもそんなのは構わないでおいた。

本当に、話したいことがあったんだ。



「何か話し合ってたんじゃないのか?大丈夫か?」



親父の後に続いて書斎に入ると、客人を気遣うセリフが出てくるが。

まさか、静かに追い詰められていたとは思いもしないだろう。

「だ、大丈夫」

「で、何だ?何か話したいことでもあるのか」

スーツのジャケットを脱いで忠晴に渡し、ネクタイを緩めて椅子に座りながら、俺に問う。