「ひょっとして…これ、まさか伶士くんの戦利品……じゃないよね?」
(はっ…!)
戦利品!とは、すなわち。
戦闘や戦争の勝利によって得られた品物!
ここ一番で、菩提さんの目力が強くなっている。
まさしくその通りといっちゃ、その通りですが…。
ですが、内密にしようと決めた俺の答えは、もちろん。
「せ、戦利品ではありません…それは、拾得物です…」
「……」
あくまでも、シラを通し切るしかないのだ。
この秘密、この人たちには悟られてはいけない。大騒ぎは御免です。
再び沈黙になる。笑顔の質問攻めも恐いが、この沈黙も恐ろしい。何をされても針の筵。
どう切り抜けるべきか悩み始めた時、玄関の方から人の気配と物音がした。
「おう、おまえら来てたのか?」
「親父…」
「橘社長、お邪魔してます」
そこに、俺の一番身近なおっさんである親父が登場した。後ろには荷物を持った忠晴もいる。
スーツ姿で戻ってきたということは、土曜日という休日なのに出勤していたらしい。