「……」



だが、なずなには俺の言いたいことがわかったようで。

何も言わずに、潤んだ目でじっと見つめられた後、一度上げた顔はまたしゅんと俯く。

ほんの少しだけ、こくんと頷いているような気がしないわけでもない。

…ホント、わかってくれマジで。

もう、あの時のように肝を冷やすのはもう嫌だからな。



しかし、この負けず嫌いはしゅんと俯いたまま黙り込んでいる。

やれやれ。「わかった」の一言も言えないのか?

しょうがないヤツ…。

…けど、わかってる。

わかってるからこそ、石のように黙りこんでいるんだろ。

ほんっと、しょうがないヤツ…。



しかし、このまま黙ったままでいるのも、時間が過ぎるだけなので、帰りを促す。



「帰ろう」

「……うん」

「…歩けるか?お姫様抱っこする?」

「しっ、しない!」

えー。何で。



そんな羞恥プレイを示唆するやり取りで、なずなはようやく立ち上がり、俺たちは家までの距離を二人で歩いた。

恋人同士らしく、手を繋いで。

触れた手は、暖かった。



「あのさぁ、私……」

「何?」