なずなと黒い翼の彼の因縁は、俺と出会う前から続いていたものであって。

おじさんの意識をはじめ…彼の手によって失ったものは、少なくないんだと思う。

だから、『護る』ことに固執して、先の件のように無茶ばかりをしていたんだろう。

…って、俺も人のことを言えない結果になったけど。



「……ごめん。ほんっとごめん」

「謝るだけならサルにも出来るわ!」

「サル…」



今は本当に御立腹されておりますが(…)そんななずなの悲痛な思いを考えると、もう謝るしか出来ない。

…けど。



俺にももう、出来ることが増えたから。

だから、その背中に乗っけた重たいものは、半分こにしよう。

…出来るようになったのは、内緒だけど。



「…でも」



そう言い掛けた時、自分の目を乱暴にこすっていたなずなが顔を上げる。

目が合うと、空気も読まず、なんだか嬉しくなってしまった。

そして、一言掛ける。



「…なずなだって、俺の前からいなくなるんじゃないぞ」



…これは、先の件の話を持ち出してみた。

なずながいなくなった、死にかけたと耳にした時のあの絶望感は如何程だったか。

おまえも、理解する必要があるんじゃないか?