「お、おい!」

なだれ込むように手と膝のついたなずなに駆け寄って手を伸ばす。

だが「…うるさい!」と、俺の手を振り払い、バッと顔を上げて、なぜかキッと睨まれた。

あれ。



「伶士、おまえもいったい何やってんだよ!」



怒られちゃってる…何で!



「家にも寄らないで、一人でランニング行くとか!無防備過ぎるんだよ、狙われてる自覚あんのかぁっ!」

「あ…」



そういえば、なずなには何一つ告げていない。

俺の夢の中での出来事とか、実は刺客が来るのをわかってて、わざと家を離れたとか。

…まさか、ここが密かに戦場になっていたなんて、知る由もないだろう。

【夢殿】の力が覚醒して、敵さんやっつけたとか。



(…いや)



…それは、知らなくていい。

もし、知られてしまえば大騒ぎになりかねないだろう。

あ、ひょっとして…なずなの責任問題にも発展するんだろうか。

なら、尚更絶対に言わない。



自分を護ってくれる人たちが傷付かないよう、この手で護るために、力を覚醒してみました。



なんて、照れ臭いし、おこがましくて言えるわけがない。

もう、絶対秘密。