そう言って不気味な笑みを浮かべる彼に、更なる恐怖を感じずにはいられない。

って、さっきの話とは…観念しろ云々の話か?



それは、どういうこと…?



見当もつかず、想像力が働かなくて混惑している俺の様子を、彼は笑顔で見守っている。

楽しんでいるようなそのウキウキした笑顔、はっきり言って冗談じゃない。

だが、反論する前に、彼はここを立ち去るのだった。

大きくて不気味な二つの黒い翼をバサバサとはためかせて、枝から飛び立つ。



「じゃあ、これからを楽しみにしているといいよ?…【夢殿】?」



そう俺に告げて、ただ笑みを残し、彼は鳥のように羽ばたいて去っていくのだった。

俺はそれを黙って見送るカタチとなるが。



「リグ・ヴェーダぁっ!待てっ!…待て!」



彼が立ち去るのと入れ違いでここにやってきたのは、なずなだった。

俺の前を通り過ぎて、既に遥か彼方に飛んで行き豆粒ぐらいの大きさになった彼の後を追いかけていく。

だが、復活しきれてないなずなの体力は持たなかったのか、ゼェゼェと肩で息をしながら、次第によろよろと地に倒れ込んでいく。