親父が…?



その言葉を受けて、俺も確認するように忠晴の方に顔を向ける。

「本っ当、親子ですよね…」と、忠晴は苦笑いしていた。



「私がお迎えに上がったのは伶士さまだけではありませんよ。なずなさんもです。旦那様の命において」

「俺は別にいいって断ったんだけどね。でも橘社長はなずなが可愛いから」

「菩提さんのこれからのことも考えていらっしゃるのですよ」

「でも、まあ…なずなとしても、今の霊力のない状態なら、ここにいるよりも哲太の張った強固な摩睺羅伽の結界の中にある橘家に、暫くいた方が安心なんじゃない?」

「剣軌…」

「どうせしばらく学校にも行けないし、仕事も無理だ。ここは橘社長の顔を立てて、大人しくお世話になるんだな」

「………」



そして、なずなは俯いてしばらく固まったままの後。

無言でコクリ頷いた。



「そうとなれば、早速荷造りを始めましょう。…なずなさん、お手伝いしますか?」

「…大丈夫だよ。ちょっと待ってて」



そう言って、なずなはゆっくりと席を立つ。

奥の部屋へと姿を消してしまった。



(えーと…)



これは、いったいどういうことなのか。