《なずなが、俺が良いって言ってくれるなら、もう何でもいい》
…の、前に。
私にとっては、たった一人の人だぞ。
《…一緒にいる》
今までに掛けられたひとつひとつの、嬉しかった言葉が、急に溢れてきては胸をキュッと締め付けてきて。
立場とか伶士との関係性とか。
相手が格上だの何だの、たかがそんなことにジレンマを抱いてがんじがらめになっていた自分が愚かだったということに気付かされる。
私、バカなんじゃないの?
伶士は…。
…こんな、派手で女らしさのカケラもない私を選んでくれた。
かけがえのない、たった一人の…男。
《私の誕生日過ぎたけど…》
《まあそこはいいだろ。ちゃんとお祝いしてなかったし》
《別にいいのに》
《…よくない!》
…私の何が良いんだか知らないが。
それでも『好きだ』と言ってくれて、大切にしようとしてくれる。
《なずな、また明日》
失って…苦しめてはいけない人だ。
奪われてはいけない人だ。
私にとっても…一番、大切な人だ!