(…はっ)



ぶつけようのない怒りを思わず、心の中で吐き出した時に、ふと気付く。

…気付いてしまった。




…そうだ。

なぜ?魔族の花魁女郎蜘蛛が、人間の伶士相手にそんな…肉体交渉を求める?



魔族同士の肉体交渉って、性欲、子孫繁栄本能の他…『魔力の充填』という目的もある。

戦で魔力が減ると、枯渇したかのように同族の肉体を求める。

戦続きの魔族は、魔力充填のために同性にも手を出しちゃうぐらいらしい。

たまーに、妖魔であるインキュバスを魔族と間違えて肉体交渉してしまい、魔力を一方的に吸い取られてしまうというミスもあるようだ。

…だが、それはあくまでも『魔族同士』のこと。



もし、相手が人間となると。

魔族が人間の霊力を一方的に吸い取り、更に人間の体内に魔力を残すカタチとなる。

人間に、魔力が充填されるのだ。

その魔力の量によっては、人間が死に至る場合もあり、そこをガブリと食べる魔族は少なくない。

しかし、魔族が『霊力』だけを吸い取っても、何の肥やしにもならない。

ただ、美味しいだけ。ジュースや酒を飲んでるようなもん。

人間の血肉を直接喰らわないと、魔力は充填されないのだ。



霊力を吸い取り、魔力を体内に残す。