早めに戻るったって…。

剣軌は、行き先を告げない出張が定期的にある。

いったいどこで何をやってんだか。




ただ待機、監視。

ボスの指示なので黙って従う他ないのだが。




不調そうなのは明らかだ。さっきからマネのむーやアンナカ、曽根が伶士に声を掛けている。

しかし、首を振って拒否するような仕草を見せており、試合に引き続き参加しているようだ。

…この上なくもどかしさが込み上げてくる。




伶士は恐らく…【傀儡】の力で無理矢理試合に参加しているのだ。

大方『周りに異変を悟られないように』と、花魁女郎蜘蛛が操っているのだろう。

体調不良だからって、そこに伶士の意志は存在しない。

それに…。



(…ん?)



何だ?この違和感。

伶士の霊力の流れがちょっとばかし昨日と違うような気がする。



しかし、それが何かは分からずじまいだった。




…昨日も、ナンナナの現場に行ったり、定点カメラ監視は続けた。

部屋の窓は、一箇所のみ朝まで電気がついたままであり、そこに人影は映ってはいない。