「間違いない。この人だよ。顔のほくろの位置も合ってる」

「…本当に、その花魁女郎蜘蛛に食べられてるのかしら」

「七割、といったところかな。憑依や術式で動いてるとするなら、随分と俊敏だったよ。魔力も遠慮なく漏れていて…ヨーテリの言った通り、まさしく《人間の皮を被っている》みたいだった」

ヨーテリの言った通り、恐らく…中身が綺麗に食べられているのだと思う。人間の姿を得るために。

そう結論せざるを得ない状況に、胸が痛む。



人間が、魔族によって食べられてしまった。

あってはいけないことが…起こってしまった。

人間一人の命が失われた憤りは、もちろん。



それに、魔族が魔力を高めるために手頃なのが、人間を食すこと。

直近で食べた回数が多いほど、本来の持つ魔力以上に力が高まる。



「行方不明日、最近よね。それまでに何人か同様の手口で食べちゃってるのかしら」

「そうかもしれない…これ以上、繰り返されると手に負えない状況になる」

「それプラス、リグ・ヴェーダの羽根を口にしてるとしたら、厄介ね…」

「…うん」