…よし。
忠晴さん、上手いこといったみたいだ。
予め、忠晴さんには『伶士を車に乗せて、学校まで送る』よう誘導してほしいとお願いした。
忠晴さんの車には結界が張ってある。忠晴さんの車に乗っている間は、誰も伶士に近付くことは出来ない。伶士の身の安全を考えた上での行動。
そして、車の中でひとつふたつ質問して伶士の様子を伺って欲しいともお願いしてある。
これで何かわかることがあれば…。
忠晴さんは、伶士を無事学校まで送り届けた後、こっちに戻ってきてくれる予定だ。
私はというと、コンビニを出て周辺を見渡す。
自分の身を隠しながら、伶士が一晩滞在していたマンションへの道のりを辿った。
…ひょっとしたら、あの女に会えるかもしれない。
そう期待して足を進めたが、長い黒髪の小柄な女の姿はなかった。
ちっ。外には出て来てなかったか。
それから数十分後。
忠晴さんが車でリターンしてきた。
再び車に乗り込み、今度は伶士の練習試合への会場へと向かう。
行き先は、江別。
伶士から目を離さず、遠くから様子を見守るつもりだ。