その瞬間、泉はしまったという表情になり、舌を出す。


やっぱり、図星だったみたいだ。


あたしは呆れて泉を睨みつけた。


「なんでそんな余計なことをするの？」


「余計なことじゃないでしょう？」


泉は申し訳なさそうな表情をしながらも、キッパリと言いきった。


「あたしは琴江に心から笑ってほしいし、自分から幸せを選べるようになってほしいの」


泉の表情は真剣だ。


あたしは見ていることができなくて泉から視線をそらせた。


泉があたしを心配してくれていることは理解している。


それでも、あたしはずっとあたしのままで生きてきたのだ。


突然変化しろと言われてもそれは難しい。


「勇人のこと、好きなんでしょう？」


聞かれて、あたしは返事に困った。


きっとそうなのだろうと思う反面、胸の奥を覗いてみればそこには松本くんの姿が見える。

松本くんのことが好きかどうかはよくわからないけれど、こんな中途半端な気持ちで勇人への気持ちを口にすることはできなかった。


「……勇人にあのことを話せる時が来たら、きっと変われると思うから」


あたしは声を絞り出すようにして言った。