「謝るのは俺の方だけど……でも、なんてすぐに逃げなかったんだよ」


やっぱり松本くんは怒っているみたいだ。


「逃げる余裕がなかったんだもん」


嘘じゃない。


咄嗟に隠れてしまったのも悪かったけれど、それはもうどうしようもないことだ。


「これで仲村さんまで目を付けられる」


「そしたらまた、松本くんが助けてくれるよね?」


そう言うと、松本くんはまた目を丸くしてあたしを見つめた。


あたしも、自分がこんなことを言うなんて思ってもいなかった。


「俺とはもう関わらない方がいい」


「なんで?」


「なんでも。何があっても、仲村さんは気にしなくていいから」


本人からこうもキッパリ言われると、返す言葉がなかった。


泉にも何度も同じようなことを言われている。


あたしはそんなに松本くんに関わっているだろうかと、首をかしげたくなる。


「松本くんって、本当は強いでしょ」


その質問には答えてくれなかった。


すでにいつもみたいにうつむいてしまっている。


「強いのに、どうしてやり返さないの?」