後ろからは十数人の男子たちが追いかけてくる足音がする。


なにかとんでもないことをしてしまった気がする。


でも……。


あたしはしっかりと握りしめられている手を見つめて、徐々に落ち着きを取り戻してきていた。


あたしたちは間違ったことはしてない。


走りながらなんだかおかしくなってきて笑い声をあげた。


こんな風に自分からトラブルに巻き込まれたのだって初めての経験だ。


「なにがそんなにおかしいんだよ」


気がつくとひと気のない渡り廊下に来ていた。


追いかけてきていた男子たちの姿はもうない。


立ち止まり、肩で呼吸を繰り返す。


こんなに必死になって逃げたのも生まれて初めての経験だった。


めいっぱい走ることの清々しさを始めて知った。


「……ごめん」


松本くんの真剣な表情を見て、ようやくあたしはそう口にした。