ここは、ボロアパートの一室ー。
女性の怒号が、外まで聞こえていた。
「あんたなんか、産むんじゃなかった!!
あんたなんか、死ねばいいのよ!!
あんたのせいで、私の人生、めちゃめちゃ!!
私の人生、返してっっ!!」
女性の怒号の合間に聞こえてくる、子どもの泣き声…。
「ごめんなさい!!
やめて、おかあさん!!」
「うるさいっっ!!
あんたなんか、居なくなればいいのよっっ!!」
母親は、ベランダのガラス戸を開け、子どもを放り出した。
そして、ベランダのガラス戸の鍵を閉めた。
「おかあさん!!
ごめんなさい!!
いれてよっ!!
さむいよぉっ!!」
子どもは、泣き叫びながら、ガラス戸を叩いた。
「うるさいっっ!!
うるさいっっ!!」
母親は、両手で、両耳を塞ぎ、両膝をつき、勢いよく、カーテンを閉め、頭を抱え、泣いた。
子どもは、泣き叫び続けた。
それでも、母親が、ガラス戸を開けることはなかった。
泣き疲れた、子どもは、冬の寒空を見上げた。
外は、雪がちらついていた。
子どもは、ベランダに座り込み、息を手に吹きかけ、暖をとった。
夜になると、母親は、化粧をし始めた。
それから、仕事に行く前に、カーテンを開いた。
母親は、子どもを、まるで、ゴミでも見るような、目つきで、子どもを見下ろした。
子どもは、それに気が付き、また、ガラス戸を叩いた。
でも、母親の目つきは、変わらなかった。
そして、子どもに、暴言を吐いた。
「ほんっっと、あいつに似て、憎らしい顔っっ!!
そんな顔で、こっち見ないでよっっ!!
あー、ムカつくっっ!!
一晩、そこに居なっっ!!」
それだけ言うと、母親は、再び、カーテンを閉め、仕事に行った。
子どもは、体操座りをして、何度も、手に息を吹きかけ、暖をとっていた。
22時頃ー。
そんな子どもの前に、丸い明かりが2つ現れた。
あまりに、不思議なことだったので、子どもは、目を凝(こ)らして、明かりを見た。
その明かりは、列車の明かりだった。
白い煙を吐きながら、空中に浮かぶ、5両編成の赤い列車が、子どものいる、ベランダに近付いてきた。
子どもは、目をパチクリ…。
すると、3両目の出入り口が開き、太っちょの車掌が現れた。
不振がる、子どもに、車掌は優しく微笑んだ。
それから、車掌は、子どもに向かって言った。
「おほんっ。
明石(あかいし)かのん様、5歳ですね?」
かのんは、自分の名前と年齢を言われ、驚きの表情をし、何度も頷いた。
車掌は、再び、微笑んだ。
「ようこそ、子ども列車へ!!
どうぞ、お入りください。
中は、温かいですよ。
さぁ、どうぞどうぞ。」
そう言って、かのんを、招き入れようとした。
でも、かのんは、不安がって、入りにくそうにした。
車掌は、優しい声色(こわいろ)で、かのんに聞いた。
「どうかしましたか?」
「あたし…、おかね…、なくて…。」
「そのことで、悩んでいたのですね?
ご心配なく。
この子ども列車は、全て、タダです。」
「タダ?!」
「そうです。」
「じゃあ、乗ります!!」
「ご乗車、ありがとうございます。」
かのんは、大喜びで、列車に乗った。
車掌は、ニコニコしながら、列車内の案内を始めた。
「まずは、1両目から、ご案内しましょう。
1両目は、食堂車です。
お腹が空いたら、ここを使って下さい。」
「はい。」
「次は、2両目から4両目ですが、こちらは、寝台車となっております。」
「しんだいしゃ…?」
「失礼しました。
眠くなった時に使うところです。」
「へぇー…。」
「最後に、5両目ですが、5両目は、お風呂になっております。」
「お風呂?!」
かのんは、大喜び。
「まずは、何をしますか?」
「お風呂!!」
「分かりました。」
車掌は、かのんを、5両目に連れて行った。
「それでは、ごゆっくり。」
「はい。」
かのんは、大きくて、温かいお風呂に入れて、大喜び。
お風呂の後、かのんは、食堂車に行った。
すると、奥から、太っちょnコックが出てきて、かのんを席まで案内してくれ、メニューを渡してくれた。
かのんは、その中から、お子様ディナーとオレンジジュースを注文した。
コックは、かのんに、お辞儀をして、キッチンに入って行った。
少しして、オレンジジュースがきて、次に、コーンスープがきた。
かのんは、オレンジジュースを一口飲み、コーンスープを飲んだ。
それから、サラダとパンとカットステーキがきた。
かのんは、パクパク食べた。
「(こんなに、あたたかくて、おいしいごはん、ひさしぶりにたべた。)
(すごく、おいしい。)」
そこに、車掌が来た。
「お味は、いかがですか?」
「とってもおいしいっっ!!」
「それは良かったです。」
車掌は、優しく、微笑んだ。
かのんは、お父さんが居た時のことを話した。
「おとうさんがいたときは、おかあさんも、あたたかい、おいしい、ごはん作ってくれてたんだよ。」
「そうですか。」
「でも、おとうさんがいなくなってから、ごはんが、なくなったの。
あっても、つめたい、ごはん…。」
「そうだったんですか…。」
「おふろも、つめたくて、あまり、はいれなくて…。」
「そうだったんですね…。
では、この子ども列車で、ゆっくりして行って下さい。」
「はいっ!!」
ご飯を食べると、かのんは、寝台車に行き眠った。
その様子を見た、車掌は、時間をいじり、列車の外の時計を止めた。
かのんは、ゆっくりと眠ることが出来た。
朝7時15分前ー。
かのんは、起こされ、ベランダに帰ってきた。
列車は、かのんを降ろし、空へと旅立った。
かのんは、列車が見えなくなるまで、手を振った。
その後、すぐに、母親が、コンビニ弁当を持って帰ってきた。
母親は、帰ってくるなり、ベランダの鍵を開けた。
そして、母親は、寝室に行った。
かのんは、母親が起きないように、母親が買ってきた、コンビニ弁当を自分の弁当箱に詰め、水筒を準備し、幼稚園の制服を着て、幼稚園に向かった。
幼稚園から帰ると、かのんは、弁当箱と水筒を洗って、洗い物カゴに入れた。
17時ー。
母親が起きた。
起きると、すぐに、温かいお湯のお風呂に入った。
でも、かのんは、入らせてもらえなくて、母親が、化粧をしている間に、冷めた、お風呂に入らせてもらった。
「(おゆ…つめたい…。)
(こどもれっしゃ、こないかなぁ…。)」
そんなことを考えていると、「お風呂が長い!!」と、母親は、かのんの髪を引っ張り、お風呂から出した。
「おかあさん、ごめんなさい!!」
「さっさと着替えなっっ!!」
「はい…。」
かのんは、厚着ををした。
そんな、かのんを見て、母親は、殴る蹴るの暴行を加え、ベランダに、放り出した。
そして、ベランダの鍵を閉め、カーテンを閉めた。
かのんは、また、手に息を吹きかけ、暖を取った。
21時ー。
また、子ども列車が来てくれた。
かのんは、大喜び。
車掌が、かのんを招き入れると、かのんは、すぐに、お風呂に入った。
「(はぁー…。)
(あったかーい…。)
(きもちいい…。)」
お風呂から出ると、食堂車に行った。
すると、昨日のコックが来た。
「ようこそ。
さぁ、何にされますか?」
「ミートスパゲッティーとオレンジジュース!!」
「かしこまりました。」
コックは、お辞儀をし、キッチンに行った。
ミートスパゲッティーとオレンジジュースは、すぐに来た。
「お待たせしました。」
「わーい!
おいしそう!!」
かのんは、ミートスパゲッティーを頬張った。
「(おいしいーっっ!!)」
かのんは、大喜び。
ご飯を食べ終わると、かのんは、寝台車で眠った。
車掌は、それを見て、時間をいじった。
7時15分前ー。
かのんは、ベランダに、送り届けられた。
母親が、コンビニ弁当を持って帰ってきたのは、かのんが、ベランダに戻ってきた、20分後だった。
母親は、ベランダの鍵を開け、かのんを家に入れた。
かのんは、自分の弁当箱に、コンビニ弁当を詰め、コンビニで買って来てくれた、お茶を自分の水筒に入れ、幼稚園の制服に着替え、幼稚園に行った。
幼稚園から帰ると、かのんは、自分の弁当箱と水筒を洗い、洗い物カゴに置いた。
そして、制服を着替えた。
すると、母親が、起きた。
「あんたさぁ、静かに出来ないの?
弁当箱と水筒、もっと、静かに洗いなさいよ!!
それか、私が、仕事に行ってから、洗えばいいでしょ?!
そんなのも、分からないの?!」
母親は、かのんを殴ったり、蹴ったりした。
「おかあさん、ごめんなさい!!
いたいっ!!
やめて、おかあさんっっ!!」
「うるさいっっ!!」
母親は、かのんの髪を引っ張り、ベランダに放り出し、鍵を閉めた。
かのんは、ガラス戸を、泣き叫びながら叩いた。
母親は、カーテンを閉め、両耳を両手で塞ぎ、「うるさい!」を連呼した。
かのんは、母親が、仕事に行くと、夜空を見上げた。
「(こどもれっしゃ、こないかなぁ…。)」
すると、子ども列車が来た。
「(あー、こどもれっしゃーっっ!!)」
かのんは、目を輝かせた。
車掌は、かのんを招き入れた。
かのんは、ずっと、思っていたことを、車掌に話した。
「あの…、こどもれっしゃには、ずっと、のれるの?」
車掌は、首を振り答えた。
「いいえ。
子ども列車に乗れるのは、7回までです。」
「そうなんだ…。」
かのんは、しゅんとした。
車掌は、かのんを、食堂車に連れて行った。
「かのん様、7回目の時の話しをしましょう。
その前に、かのん様、何を飲まれますか?
話しが、長くなるかもしれませんので…。」
「じゃあ、あったかい、ここあ。」
車掌は、コックに、ココアのホットと、コーヒーを注文した。
飲み物は、すぐにきた。
かのんは、ココアを飲んだ。
「おいしいー。」
車掌は、優しく微笑んだ。
「飲み物がきましたので、お話ししましょう。
子ども列車に乗れる最後の日。
お帰りの際、記念切符をお渡しします。
記念切符は、お母さんに見つからないように、お母さんのバッグに入れて下さい。
そうすると、かのん様にいいことがあります。
ぜひ、使って下さい。」
「はい。
(いいことってなんだろう…。)
(こどもれっしゃ…、ずっと、のりたかったなぁ…。)」
「では、本日も、子ども列車で、楽しんで下さい。」
「はい。」
かのんは、いつも通り、子ども列車で、楽しんだ。
かのんが、眠りにつくと、車掌は、時計をいつもより長く止めた。
それを見た、コックは、車掌に、話しかけた。
「今日は、いつもより、長く止めるんですね。」
「ええ。
説明が、長引きましたからね…。」
「なるほど。」
7時15分前ー。
かのんは、ベランダに送り届けられた。
母親が帰ってくると、ベランダの鍵が開けられ、かのんは、幼稚園の準備をして、幼稚園に行った。
そして、かのんが、子ども列車に乗れる、最後の日がきた。
「(きょうで、さいごかぁ…。)
(さみしいな…。)」
そんな、かのんの前に、子ども列車が来た。
いつもの3両目の出入り口から、いつもの車掌が、出迎えてくれた。
「こんばんは、かのん様。
本日で最後ですね…。
寂しくなります。
本日は、たっぷりと遊んで下さい。」
「はい。」
かのんは、まず、お風呂に入り、食堂車に行った。
行くと、いつものコックが出て来てくれた。
「かのん様。
本日が、最後ですね。
寂しくなります…。」
「あたしも…。」
「では、本日は、特別メニューを、お出ししますね。」
「ありがとう。」
コックは、特別メニューを、出してくれた。
「わぁー…。
すごい、ごちそうだぁー…。」
出してくれたメニューは、コーンスープ、生ハム、サーモンのカルパッチョ、ハンバーグステーキ、パン、デザート(いちごのショートケーキ)、オレンジジュースだった。
かのんは、特別メニューを、大喜びで食べた。
食べ終わると、もう一度、お風呂に入った。
お風呂を出ると、寝台車で眠った。
車掌は、それを見て、時間をいじった。
列車を降りる時、車掌は、記念切符を、かのんに渡した。
母親は、帰ってくると、いつものように、ベランダの鍵を開けあた。
かのんは、幼稚園に行く準備をしながら、母親にバレないように、母親のバッグに記念切符を入れた。
それから、かのんは、幼稚園に行った。
幼稚園から帰ると、母親が起きていた。
「(おかあさん、起きてる…。)」
それだけで、かのんは、ビクッとなった。
でも、母親の様子が、いつもと違った。
「(なぐられる…?)
(けられる…?)」
かのんは、ビクビクしながら、弁当箱と水筒を洗った。
「(「うるさい!」っていわれる…?)」
母親は、何も言わず、ボーっとし始めた。
夜になるにつれ、母親は、益々、ボーッとなった。
かのんは、母親に声をかけようとしたけど、「(なぐられる…?)」と思い、声をかけられなかった。
夜7時ー。
外に、2つの明かりが見えた。
「(こどもれっしゃ…?)
(でも、「さいご。」って、いわれたし…。)
(それに、いつもより、はやいっ!)
(どうしたんだろう…。)」
かのんは、ベランダに出た。
すると、黒い煙を吐く、真っ黒な列車が、空中に浮かんでいた。
かのんは、驚いた。
「(こどもれっしゃじゃない!!)」
かのんは、後ずさりした。
後ずさりすると、母親にぶつかった。
かのんは、「(なぐられるっっ!!)」と思い、ぎゅっと目を瞑(つむ)った。
だけど、母親は、ボーッとしたままで、黒い列車に近付いた。
母親が、近付くと、3両目の出入り口が開き、中から、ガリガリで、目がギョロっとした、顔の怖い車掌が出てきた。
車掌は、母親に、「切符は、お持ちですか?」と聞いた。
母親は、記念切符を、車掌に出した。
車掌は、母親を招き入れた。
そして、不気味な笑顔を、かのんに見せた。
かのんは、ビクッとなって、部屋に戻り、ベランダの鍵を閉め、カーテンも閉めた。
「(あさになったら、おかあさん、もどってくるよね…。)」そう思っていたけど、朝になっても、帰って来なかった。
かのんは、お弁当も水筒も持たずに、幼稚園に行った。
幼稚園先生は、すぐに、児童相談所に電話した。
児童相談所の人は、かのんの父親に連絡して、かのんは、父親と暮らすことになった。
女性の怒号が、外まで聞こえていた。
「あんたなんか、産むんじゃなかった!!
あんたなんか、死ねばいいのよ!!
あんたのせいで、私の人生、めちゃめちゃ!!
私の人生、返してっっ!!」
女性の怒号の合間に聞こえてくる、子どもの泣き声…。
「ごめんなさい!!
やめて、おかあさん!!」
「うるさいっっ!!
あんたなんか、居なくなればいいのよっっ!!」
母親は、ベランダのガラス戸を開け、子どもを放り出した。
そして、ベランダのガラス戸の鍵を閉めた。
「おかあさん!!
ごめんなさい!!
いれてよっ!!
さむいよぉっ!!」
子どもは、泣き叫びながら、ガラス戸を叩いた。
「うるさいっっ!!
うるさいっっ!!」
母親は、両手で、両耳を塞ぎ、両膝をつき、勢いよく、カーテンを閉め、頭を抱え、泣いた。
子どもは、泣き叫び続けた。
それでも、母親が、ガラス戸を開けることはなかった。
泣き疲れた、子どもは、冬の寒空を見上げた。
外は、雪がちらついていた。
子どもは、ベランダに座り込み、息を手に吹きかけ、暖をとった。
夜になると、母親は、化粧をし始めた。
それから、仕事に行く前に、カーテンを開いた。
母親は、子どもを、まるで、ゴミでも見るような、目つきで、子どもを見下ろした。
子どもは、それに気が付き、また、ガラス戸を叩いた。
でも、母親の目つきは、変わらなかった。
そして、子どもに、暴言を吐いた。
「ほんっっと、あいつに似て、憎らしい顔っっ!!
そんな顔で、こっち見ないでよっっ!!
あー、ムカつくっっ!!
一晩、そこに居なっっ!!」
それだけ言うと、母親は、再び、カーテンを閉め、仕事に行った。
子どもは、体操座りをして、何度も、手に息を吹きかけ、暖をとっていた。
22時頃ー。
そんな子どもの前に、丸い明かりが2つ現れた。
あまりに、不思議なことだったので、子どもは、目を凝(こ)らして、明かりを見た。
その明かりは、列車の明かりだった。
白い煙を吐きながら、空中に浮かぶ、5両編成の赤い列車が、子どものいる、ベランダに近付いてきた。
子どもは、目をパチクリ…。
すると、3両目の出入り口が開き、太っちょの車掌が現れた。
不振がる、子どもに、車掌は優しく微笑んだ。
それから、車掌は、子どもに向かって言った。
「おほんっ。
明石(あかいし)かのん様、5歳ですね?」
かのんは、自分の名前と年齢を言われ、驚きの表情をし、何度も頷いた。
車掌は、再び、微笑んだ。
「ようこそ、子ども列車へ!!
どうぞ、お入りください。
中は、温かいですよ。
さぁ、どうぞどうぞ。」
そう言って、かのんを、招き入れようとした。
でも、かのんは、不安がって、入りにくそうにした。
車掌は、優しい声色(こわいろ)で、かのんに聞いた。
「どうかしましたか?」
「あたし…、おかね…、なくて…。」
「そのことで、悩んでいたのですね?
ご心配なく。
この子ども列車は、全て、タダです。」
「タダ?!」
「そうです。」
「じゃあ、乗ります!!」
「ご乗車、ありがとうございます。」
かのんは、大喜びで、列車に乗った。
車掌は、ニコニコしながら、列車内の案内を始めた。
「まずは、1両目から、ご案内しましょう。
1両目は、食堂車です。
お腹が空いたら、ここを使って下さい。」
「はい。」
「次は、2両目から4両目ですが、こちらは、寝台車となっております。」
「しんだいしゃ…?」
「失礼しました。
眠くなった時に使うところです。」
「へぇー…。」
「最後に、5両目ですが、5両目は、お風呂になっております。」
「お風呂?!」
かのんは、大喜び。
「まずは、何をしますか?」
「お風呂!!」
「分かりました。」
車掌は、かのんを、5両目に連れて行った。
「それでは、ごゆっくり。」
「はい。」
かのんは、大きくて、温かいお風呂に入れて、大喜び。
お風呂の後、かのんは、食堂車に行った。
すると、奥から、太っちょnコックが出てきて、かのんを席まで案内してくれ、メニューを渡してくれた。
かのんは、その中から、お子様ディナーとオレンジジュースを注文した。
コックは、かのんに、お辞儀をして、キッチンに入って行った。
少しして、オレンジジュースがきて、次に、コーンスープがきた。
かのんは、オレンジジュースを一口飲み、コーンスープを飲んだ。
それから、サラダとパンとカットステーキがきた。
かのんは、パクパク食べた。
「(こんなに、あたたかくて、おいしいごはん、ひさしぶりにたべた。)
(すごく、おいしい。)」
そこに、車掌が来た。
「お味は、いかがですか?」
「とってもおいしいっっ!!」
「それは良かったです。」
車掌は、優しく、微笑んだ。
かのんは、お父さんが居た時のことを話した。
「おとうさんがいたときは、おかあさんも、あたたかい、おいしい、ごはん作ってくれてたんだよ。」
「そうですか。」
「でも、おとうさんがいなくなってから、ごはんが、なくなったの。
あっても、つめたい、ごはん…。」
「そうだったんですか…。」
「おふろも、つめたくて、あまり、はいれなくて…。」
「そうだったんですね…。
では、この子ども列車で、ゆっくりして行って下さい。」
「はいっ!!」
ご飯を食べると、かのんは、寝台車に行き眠った。
その様子を見た、車掌は、時間をいじり、列車の外の時計を止めた。
かのんは、ゆっくりと眠ることが出来た。
朝7時15分前ー。
かのんは、起こされ、ベランダに帰ってきた。
列車は、かのんを降ろし、空へと旅立った。
かのんは、列車が見えなくなるまで、手を振った。
その後、すぐに、母親が、コンビニ弁当を持って帰ってきた。
母親は、帰ってくるなり、ベランダの鍵を開けた。
そして、母親は、寝室に行った。
かのんは、母親が起きないように、母親が買ってきた、コンビニ弁当を自分の弁当箱に詰め、水筒を準備し、幼稚園の制服を着て、幼稚園に向かった。
幼稚園から帰ると、かのんは、弁当箱と水筒を洗って、洗い物カゴに入れた。
17時ー。
母親が起きた。
起きると、すぐに、温かいお湯のお風呂に入った。
でも、かのんは、入らせてもらえなくて、母親が、化粧をしている間に、冷めた、お風呂に入らせてもらった。
「(おゆ…つめたい…。)
(こどもれっしゃ、こないかなぁ…。)」
そんなことを考えていると、「お風呂が長い!!」と、母親は、かのんの髪を引っ張り、お風呂から出した。
「おかあさん、ごめんなさい!!」
「さっさと着替えなっっ!!」
「はい…。」
かのんは、厚着ををした。
そんな、かのんを見て、母親は、殴る蹴るの暴行を加え、ベランダに、放り出した。
そして、ベランダの鍵を閉め、カーテンを閉めた。
かのんは、また、手に息を吹きかけ、暖を取った。
21時ー。
また、子ども列車が来てくれた。
かのんは、大喜び。
車掌が、かのんを招き入れると、かのんは、すぐに、お風呂に入った。
「(はぁー…。)
(あったかーい…。)
(きもちいい…。)」
お風呂から出ると、食堂車に行った。
すると、昨日のコックが来た。
「ようこそ。
さぁ、何にされますか?」
「ミートスパゲッティーとオレンジジュース!!」
「かしこまりました。」
コックは、お辞儀をし、キッチンに行った。
ミートスパゲッティーとオレンジジュースは、すぐに来た。
「お待たせしました。」
「わーい!
おいしそう!!」
かのんは、ミートスパゲッティーを頬張った。
「(おいしいーっっ!!)」
かのんは、大喜び。
ご飯を食べ終わると、かのんは、寝台車で眠った。
車掌は、それを見て、時間をいじった。
7時15分前ー。
かのんは、ベランダに、送り届けられた。
母親が、コンビニ弁当を持って帰ってきたのは、かのんが、ベランダに戻ってきた、20分後だった。
母親は、ベランダの鍵を開け、かのんを家に入れた。
かのんは、自分の弁当箱に、コンビニ弁当を詰め、コンビニで買って来てくれた、お茶を自分の水筒に入れ、幼稚園の制服に着替え、幼稚園に行った。
幼稚園から帰ると、かのんは、自分の弁当箱と水筒を洗い、洗い物カゴに置いた。
そして、制服を着替えた。
すると、母親が、起きた。
「あんたさぁ、静かに出来ないの?
弁当箱と水筒、もっと、静かに洗いなさいよ!!
それか、私が、仕事に行ってから、洗えばいいでしょ?!
そんなのも、分からないの?!」
母親は、かのんを殴ったり、蹴ったりした。
「おかあさん、ごめんなさい!!
いたいっ!!
やめて、おかあさんっっ!!」
「うるさいっっ!!」
母親は、かのんの髪を引っ張り、ベランダに放り出し、鍵を閉めた。
かのんは、ガラス戸を、泣き叫びながら叩いた。
母親は、カーテンを閉め、両耳を両手で塞ぎ、「うるさい!」を連呼した。
かのんは、母親が、仕事に行くと、夜空を見上げた。
「(こどもれっしゃ、こないかなぁ…。)」
すると、子ども列車が来た。
「(あー、こどもれっしゃーっっ!!)」
かのんは、目を輝かせた。
車掌は、かのんを招き入れた。
かのんは、ずっと、思っていたことを、車掌に話した。
「あの…、こどもれっしゃには、ずっと、のれるの?」
車掌は、首を振り答えた。
「いいえ。
子ども列車に乗れるのは、7回までです。」
「そうなんだ…。」
かのんは、しゅんとした。
車掌は、かのんを、食堂車に連れて行った。
「かのん様、7回目の時の話しをしましょう。
その前に、かのん様、何を飲まれますか?
話しが、長くなるかもしれませんので…。」
「じゃあ、あったかい、ここあ。」
車掌は、コックに、ココアのホットと、コーヒーを注文した。
飲み物は、すぐにきた。
かのんは、ココアを飲んだ。
「おいしいー。」
車掌は、優しく微笑んだ。
「飲み物がきましたので、お話ししましょう。
子ども列車に乗れる最後の日。
お帰りの際、記念切符をお渡しします。
記念切符は、お母さんに見つからないように、お母さんのバッグに入れて下さい。
そうすると、かのん様にいいことがあります。
ぜひ、使って下さい。」
「はい。
(いいことってなんだろう…。)
(こどもれっしゃ…、ずっと、のりたかったなぁ…。)」
「では、本日も、子ども列車で、楽しんで下さい。」
「はい。」
かのんは、いつも通り、子ども列車で、楽しんだ。
かのんが、眠りにつくと、車掌は、時計をいつもより長く止めた。
それを見た、コックは、車掌に、話しかけた。
「今日は、いつもより、長く止めるんですね。」
「ええ。
説明が、長引きましたからね…。」
「なるほど。」
7時15分前ー。
かのんは、ベランダに送り届けられた。
母親が帰ってくると、ベランダの鍵が開けられ、かのんは、幼稚園の準備をして、幼稚園に行った。
そして、かのんが、子ども列車に乗れる、最後の日がきた。
「(きょうで、さいごかぁ…。)
(さみしいな…。)」
そんな、かのんの前に、子ども列車が来た。
いつもの3両目の出入り口から、いつもの車掌が、出迎えてくれた。
「こんばんは、かのん様。
本日で最後ですね…。
寂しくなります。
本日は、たっぷりと遊んで下さい。」
「はい。」
かのんは、まず、お風呂に入り、食堂車に行った。
行くと、いつものコックが出て来てくれた。
「かのん様。
本日が、最後ですね。
寂しくなります…。」
「あたしも…。」
「では、本日は、特別メニューを、お出ししますね。」
「ありがとう。」
コックは、特別メニューを、出してくれた。
「わぁー…。
すごい、ごちそうだぁー…。」
出してくれたメニューは、コーンスープ、生ハム、サーモンのカルパッチョ、ハンバーグステーキ、パン、デザート(いちごのショートケーキ)、オレンジジュースだった。
かのんは、特別メニューを、大喜びで食べた。
食べ終わると、もう一度、お風呂に入った。
お風呂を出ると、寝台車で眠った。
車掌は、それを見て、時間をいじった。
列車を降りる時、車掌は、記念切符を、かのんに渡した。
母親は、帰ってくると、いつものように、ベランダの鍵を開けあた。
かのんは、幼稚園に行く準備をしながら、母親にバレないように、母親のバッグに記念切符を入れた。
それから、かのんは、幼稚園に行った。
幼稚園から帰ると、母親が起きていた。
「(おかあさん、起きてる…。)」
それだけで、かのんは、ビクッとなった。
でも、母親の様子が、いつもと違った。
「(なぐられる…?)
(けられる…?)」
かのんは、ビクビクしながら、弁当箱と水筒を洗った。
「(「うるさい!」っていわれる…?)」
母親は、何も言わず、ボーっとし始めた。
夜になるにつれ、母親は、益々、ボーッとなった。
かのんは、母親に声をかけようとしたけど、「(なぐられる…?)」と思い、声をかけられなかった。
夜7時ー。
外に、2つの明かりが見えた。
「(こどもれっしゃ…?)
(でも、「さいご。」って、いわれたし…。)
(それに、いつもより、はやいっ!)
(どうしたんだろう…。)」
かのんは、ベランダに出た。
すると、黒い煙を吐く、真っ黒な列車が、空中に浮かんでいた。
かのんは、驚いた。
「(こどもれっしゃじゃない!!)」
かのんは、後ずさりした。
後ずさりすると、母親にぶつかった。
かのんは、「(なぐられるっっ!!)」と思い、ぎゅっと目を瞑(つむ)った。
だけど、母親は、ボーッとしたままで、黒い列車に近付いた。
母親が、近付くと、3両目の出入り口が開き、中から、ガリガリで、目がギョロっとした、顔の怖い車掌が出てきた。
車掌は、母親に、「切符は、お持ちですか?」と聞いた。
母親は、記念切符を、車掌に出した。
車掌は、母親を招き入れた。
そして、不気味な笑顔を、かのんに見せた。
かのんは、ビクッとなって、部屋に戻り、ベランダの鍵を閉め、カーテンも閉めた。
「(あさになったら、おかあさん、もどってくるよね…。)」そう思っていたけど、朝になっても、帰って来なかった。
かのんは、お弁当も水筒も持たずに、幼稚園に行った。
幼稚園先生は、すぐに、児童相談所に電話した。
児童相談所の人は、かのんの父親に連絡して、かのんは、父親と暮らすことになった。