朝9時になり、手術室にはヘルパーさんが数人現れる。


朝の掃除の為に。


慣れているのか分娩台で苦しむ私を横目にガーっと大きな音を立てて通り過ぎていく掃除機。


そして、新生児室にいる赤ちゃんの沐浴の時間になり、またリュウジは一度外へと出される。


8.5センチになってからは陣痛の感覚はどんどん短くなり……それでもこの時間が終わらないんじゃないかってそんな気になる。


世間のお母さんをやっている人が皆こんな思いをしているんだとしたら……それって本当に凄い事だと思いながら、自分はもう無理なんじゃないかと諦めたくなってしまう。


待ち望んだ子に会える日だというのに、何故か本当に会える気がしなくて。


そして10時。


内診の結果子宮口は9.5センチ。


立会いの出来ないリュウジが最後にやって来る。


「頑張って!!」


もう、天井を仰いで何も言葉に出来ない私の頭を、そっと撫でてくれたような気がした。