画面をタップして通話を一方的に切った男は、投げるようにして私に携帯を返す。
「さーて、何分で助けにくるかな~奏子君は。」
クスクス笑いながら男は木漏れ日のような月明かりに照らされながら言う。
「人の携帯勝手に使うなんて最低です……!」
「え~、だって君人質じゃん。
犯人の俺が電話にでた方が、緊張感煽られると思わない?」
「ーーッ!!」
勢いよく通話履歴の一番上にある「奏子」の名前をタップする。
ワンコールで奏子はすぐに電話にでた。
『ーーおい!』
「そっ、奏子!?
私、天音!!早く助けにきーー」
「来て」なんて言葉は、男の人差し指が私の唇にあてがわれ止められる。
「だーめだよ、人質ちゃん。
人質は人質らしく大人しくしてないと……なんのために人質になったか分からないでしょ?」
そう言って、男は私の耳から携帯を奪い取り電源を切る動作を見せる。