そんなこと急に言われても……。
名前を呼ぶ心の準備、できてないよ。
「き……桜木」
「桔梗」
「黒薔薇」
「……天音ちゃん、俺に喧嘩うってんの?」
余計なことを口にした唇を、桜木は私の頬を掴んで突き出させる。
「ご……ごめんなさい。
でもさ、なんで嫌なの」
「なにが」
「『黒薔薇』って呼ばれるの。
私は桜木にピッタリだと思うけど。」
棘があって、最初近づけなかった。
黒くて光のない目も、どこか美しく咲き誇ってる。
そんな桜木を、皆が黒薔薇に例えるのも無理もないって思うよ。
「花なんて、枯れたり散れば終わりでしょ。
弱いのって許せないの、俺。
だから儚いものとか弱いものに例えられるの大っ嫌いなんだよね」
強く生きてきた桜木だから言える言葉だと思った。