出会いは最悪だった。
私を襲おうとするし、ひどい言葉ばかりぶつけて、泣いている私にすら容赦なかったけど。


結果、奏子の裏の顔に気づけたのはこの男のおかげだ。


それに、抵抗する意思を与えてくれた。
この人から教わらなきゃ、私はれみ子に従って、今頃男と夜の街に消えていただろう。


奏子がナイフを振り下ろしたときも、土手で喧嘩している男たちに喧嘩をやめるよう自ら飛び込んでいった時も。


それも結局桜木の力によって、止めてもらったようなもの。


私じゃない……。

ぜんぶ桜木のおかげで、私は痛い思いをしなくて済んでいる。



完全に憎めなかったのは、そんな桜木の優しさに気づいていたからなんだ。



「桜木」


「んー?」


「ありがとう」


「……っ」