「けっこうね、俺待った方だと思うんだ。
ねえ褒めて。」
「やっ……!来ないで……!!」
ジリジリと影を纏いながら近づいてくる桜木が怖くて、その場で尻りもちをつきながら彼が一歩進む度、私も後ろへ一歩下がる。
ドンッと、倉庫の隅に追いやられ、背中がぴったりと壁にくっつく。
桜木がしゃがみこみ、私の両手を縛り上げる様に片手で掴んだ。
「一時間は経ったよ。
君たちの待ち合わせ場所からここまで数分しか経たないこの場所で、岡本奏子君は一時間経ってもここに来ないんだよ~。」
「……」
「俺の言ってる意味わかるよね……?」
「……」
「見捨てられたんだよ、ヒーロー君に……ねぇ?」
「ーーッ」
言葉にされると、辛い。
だって、そんなことありえないから。
奏子が私を見捨てるなんてこと……ありえないの。
ありえない、ありえない、ありえない。
「う……っ」
「ん?」
顔をあげ、キッと目を鋭くさせながら桜木を睨む。
「ウソつき……!!
奏子は絶対助けにくる……!
だって奏子は私のこと」