「あっ、当たり前だよ。
 奏子は助けにくる……!
 だって奏子は私の……」


「"ヒーロー"?
 あっ、それとも"彼氏"だから?」


「……っ」


「バッカだねー、天音ちゃん。そんな安い幻想に騙されて。
 もしかして岡本奏子君がはじめての彼氏だったりする?
 それとも天音ちゃん、昔いじめられててそれを救ってくれたのが岡本奏子君だったり?」


「ーーッ!?」


すべてを見透かすその目が怖い。

合った目の数だけ、心の中を何回も読まれているみたいで、強がっていてもさっきから震えがとまらない。


体は心よりも正直にできている。



「君、騙されやすいでしょ。
 見た目も黒髪で三つ編みにそれに丸メガネ……雰囲気は暗いよねー、根暗ちゃん。」


「……」


「いかにもイジメてくださいって雰囲気。
 だからかなー、俺君のこといじめたくなっちゃうよ」


「……っ」


トラウマをえぐってくる。


はじめて出会った人が、こんな簡単に。


違う、はじめて出会った人だから怖いんだ。


どんな人間か分からないから。


善悪の行方不明、そしてその行方は。

話せば話すほど近づいていって……そして見つけてしまったとき。



「さーて、お話だけじゃつまんないから。
 そろそろ俺と楽しい遊びでもはじめちゃう?天音ちゃん」



彼が悪い方の人だってことを知る。