「だよね……それは思った」

思わず二人で顔を付き合わせて笑うと、今度は菜留に頬を思い切り両手で挟まれた

間近に迫る菜留の顔

「何を今さら躊躇ってるのか知らないけどっ!あんたの鋼のメンタルは学校中が認めてて、引いてるからっ!」

「ひ、ひいてるの!?」

「クヨクヨ悩んでないで、いつもみたいに告白してきなっ!約束、してるんでしょ!」

「う、うん」

ぺちんっと歯切れの良い音がして頬が叩かれた

菜留の真剣な表情に思わず目を剃らす

「菜留」

「うん?」

「私ね、確かに先輩が好きだし、一生、誰よりも一番、先輩を好きでいる自信があるの」

「そりゃ、あんだけストーカーしてればね」

「でもね、」

私がどれだけ先輩を好きでも、一方通行じゃ、先輩は幸せになれないんだ

私だけが満足してもなんの意味もないの

私が先輩の心を満たすことは、ない

「だからね、それならね?先輩が本当に好きな人と一緒になることを手伝うことが私の役目だと思うの……私が先輩に出来る、最後の、全身全霊の告白だと思うんだ」

好きな人の幸せを願う

好きな人の大切な人が、例え、一生、自分じゃなくても

それってとても……

「素敵なことだよね?」

「……」

「だって、一番近くで先輩の笑顔が見れるんだもん、その幸せの一瞬に私が少しでも関われてたことが、私の幸せだよね」

「……私は、羽華がずっと九条先輩を見てたの知ってるから、私が一番、羽華が九条先輩の幸せを願ってるの知ってるから、だから、もう、」

そこで、悲しそうに目を細めると優しく微笑んでくれた菜留

「羽華がしたいようにしな?最後、どうするのか……私は羽華の幸せを願うから」

大好き

菜留も、洸くんも、裕先輩も、樹先輩も月野先輩も

でもね?

湊先輩への大好きを捨てるのがこんなにも苦しくて、辛い

「先輩を幸せにするのは私じゃなくてもいいからさ、」

「うん」

「せめて、好きって気持ちだけは持ってたらダメかな?」

大切に大切に、伝えてきた私の片想い