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先輩が帰ったあと、恐ろしいほどに込み合った店内

なんでも、学校の王子が私達のクラスに揃ったとあれやこれやと噂が広まり

ごったがえす人

忙しい間にこっそりと盗み見たスマホには先輩からのメッセージが届いていて、

いつもならすぐ確認するのに、なぜか、見れなかった

鬼のように働かせれた後、学園の王子達の影響で込み合っていた店内も通常運転に戻った

お陰さまで、菜留は午前中の売り上げを数えながら満足そうに不気味に笑っていた

「菜留……お客さんの前でお札数えるのはやめよう?」

「ああ、ごめん、つい」

お金をミニ金庫にしまうと、突然、店の裏に私の手を引いて連れていった菜留

「な、なる!?」

「はあ、…それで?何があったの」

「え?」

「かーおっ、顔がヒドイ!!やつれたトイプードルみたいになってるから!」

「えええ!?」

や、やつれたって……

自分の頬を触りながら、菜留を見る

「もー、はい座って、まあ働かせ過ぎたかな」

「そーだよー、私だけ休憩ないんだもん」

「羽華がいると売上が上がるから」

私にお茶を渡しながら菜留も目の前に座った

「まあ、羽華のことだから、九条先輩のことだろーけど?」

「ううっ」

大当たり過ぎて何も言えない……

私が項垂れていると、はあっと短いため息を吐きつつも私の頭をポンポンと撫でてくれた

涙腺が揺るんで、涙が落ちそう…

菜留は、いつも側に居て欲しいときにずっと隣で頭を撫でてくれる

だから、自然と伝えたい心に溜まった言葉がこぼれてくる


「私の……思い込みかもなんだけどね?…先輩は、まだ紗夜さんのこと好きなんじゃないかなって…、湊先輩が自分でも、気づいていないだけで…」

「………」

「ほら、先輩って、にぶ野郎だから…」

静かな菜留にドキドキしながらついおちゃらけてしまう

菜留の顔が……梅干しみたくなっていく…

「な、菜留?」

「おバカ」

「へっ!?」

顔の全部がぎゅっと中心に集まったかと思ったら今度は真顔で暴言を吐かれた

「な、なるさん、どうしてですかあ…!!」

「だったら何?九条先輩が、その紗夜だかのこと好きだったら、羽華は告白するの止めるの?好きで居続けること、止められる?」

「や、やめれないぃ」

「うん、知ってる、てか紗夜って誰だよ」

チッと舌打ちをした菜留に、紗夜さんのことを説明した

「あー、神楽坂が言ってたイカれた女ね」

どんどん、口後悪くなる菜留になんだか申し訳なくなってくる

「てか、月野先輩といい、紗夜といいメンヘラばっかりかよ、あの王子」