フワフワのウサ耳を触っていたら、


「羽華」

「へ!?」

眠そうな声に、いつかの執事の衣装

洸くんの後ろからいきなり現れたのは湊先輩で、思わず固まる

目が合うと、私を見て湊先輩も固まった

「あ、忘れてた、そこで会ったから捕まえたんだ!ねえ、羽華、俺お手柄でしょ?」

「うん、うん!洸くんありがとうっ」

「わーい!じゃあ、ぎゅーっ!ぐえっ」

「盛るな、クソウサギ」

私に抱きつこうとした洸くんのウサ耳を引っ張って睨むのは湊先輩で、なんだか最近洸くんに対する当たりが強い気が…

「わあ!羽華ちゃん、かーわいーねー?写真撮ろっ!」

「あ、裕先輩!あ、タピオカ」

「そそ、混む前に買って来たの、一口いるかい?」

「え、欲しいです」

「どーぞって、わあああ!湊!」
「だめ」

裕先輩の手に合ったタピオカミルクティーを取ると全部飲んだ先輩

「ゴホッゴホッ、うわ、あま」

「えええ、タピオカ一気飲みする人初めて見ましたよ、先輩…」

「湊ー!俺のタピオカ返せ!あと、その独占欲も直せ!」

「羽華、コーヒーある?」

「はい!ありますよー、あ、裕先輩、タピオカうちにもありますけど、飲みませんか?」

「わーお、飲むよー!」

先輩方を窓際の席に案内する

こんなに序盤からウロウロしてるけど、今は先輩方、早くも休憩時間なのかな?

一応、急いで準備をして、先輩のところに戻る

「わー、美味しそうだ!」

ルンルンで飲み始めた裕先輩を見て微笑んでいたら、湊先輩の視線を感じて隣を見ると目があった

「あ、先輩!どうですか、似合ってますか?そーだ、先輩も執事の格好してるから、一緒に写真撮りますか?はい、チーズ」

「わー、羽華ちゃん強引だね!湊、絶対目つぶってたよ」

「ふふ、私の隠し撮り技術、舐めないでくださいよ!ほら、バッチリ!」

湊先輩とのツーショットを早速ホーム画面に設定した

うふふ、先輩少し驚いた顔してる

ニヤケながら写真を眺めていたら、クイッとスカートの裾を引かれた

「先輩?」

「……」

スカートの裾を摘まんだまま、じっとスカートを見て固まっている湊先輩

えっと……、

「あ、の…あんまり見ないでください」

「!!、ごめ」

ハッとしたように顔を上に向けて私と視線がぶつかって、また赤くなる湊先輩

「先輩……実はこういうのが好きだったんですか…まさか、こっちが着たかったとか言わないですよね?」

「いや、これ着て似合うのは洸くらい…、じゃなくて、」

そこでまた、一瞬スカートに目をやると私の顔をじっと見て、スカートの裾を摘まんで、ヒラヒラさせながら、不服そうに言った

「短くない?」

「え?」

「だから、みじか……ちょ、なに、近寄って来ないで」

「先輩!!」

身を乗り出して先輩に近づけば、突然寄ってきた私に驚いた様子で後ろに体を反った先輩

え!え!

これは!

「他の男に見せたくない的なアレですか!?」

「……いや、見苦しいから、隠した方がいい的なやつです」

「……ですよねー」

ふうっと溜め息を吐くと窓の外に視線を移してしまった先輩

窓から差し込む光に目を細めて眩しそうにしている

耳が赤いのは気のせい?

肘をついて、外を見たままの先輩に少しだけ微笑んでしまう

「私も先輩のクラスに行こっかなー」

「来ないで」

「来てよー!!サービスしちゃうよ!」

「わーいっ!えーっと、何でしたっけ?ホスト喫茶でしたか?」

「ち、違うよ!執事喫茶ね!」

先輩方とお話していたら、同じメイド服を着たクラスの子に後ろからちょいちょいっとされた

「ねね、羽華ちゃん!文化部の王子来てるんだけども!!ほら、呼んでるよ!」

「王子…?」

学校のツートップ王子は、ここにいるよ?

キョロキョロと教室を見渡して、王子とやらを探す

「私のマイエンジェルは、ここにいるんだけどなあ?」

「……まさかだけど、俺のこと?」

「はい、なにがまさかなんです?」

「いいえ……」