「エリアスちゃーん。こっち、こっち……って、なあに? そのポーズ」
「……愛しさが限界突破しましたので、エア・フィアナさんを抱きしめて堪えています」
「うわぁ。エリアスちゃん、今日も重症っ」
「阿呆言っていないで早く座れって」
パン屋のニースに急かされ、エリアスはなじみの席に腰かける。隣で、キュリオが胸元から懐中時計を取り出し、目を丸くした。
「あら、もうこんな時間なの。今日は遅かったわね」
「今日は少々立て込んでまして。これでも慌てて城を飛び出して駆けつけたんですよ」
「毎日そんなじゃないか。まあ、飲め飲め! 最初の一杯は奢ってやるよ」
がははとニースが笑ったところで、エリアスの前にトンとエールが置かれる。ちょうどフィアナが持ってきてくれたのだ。
お疲れ様です、と。唇だけで、彼女はそう言った。