「どうぞ。飲み物はエールですよね」
「はい。一緒にフィアナさんの笑顔をひとつ、ピクルスを添えてください」
「メインが逆ですから! ピクルスですね、ピクルス。笑顔は添えてあげませんけど。ちょっと待っていてください」
ぶつぶつ言いながら、フィアナはてててと駆けていく。その背中を、エリアスは微笑ましく見守る。
聖堂での一件以来、このように彼女に警戒されてしまっている。けれども、じりじりと距離を取りながらこちらを窺うフィアナは、子猫が毛を逆立てて威嚇をしているようで可愛い。すごく可愛い。いますぐ抱きしめて、モフりたくなる。
(フィアナさん……こんなに私を意識してくださるなんて……)
どうにか自制しつつ、エリアスはほろりと涙しフィアナを見る。そんな彼の視線に気づいたのだろう。ぷんすかと怒ったような顔でエールを準備していたフィアナだったが、ぱっと顔を上げてエリアスを見ると、真っ赤になって顔を背けてしまった。
エリアスは、その場に墓を掘って埋まりたくなった。