「え、いや、あの」
「フィアナさん!!!!」
フィアナの顔が引きつる。それすら気が付かず、否、気づいても無視をして、美しく整った顔をキリリと引き締め、愛の告白をつげた。
「この私――メイス国シャルツ王が宰相、エリアス・ルーヴェルトの名に懸けて、貴女に愛を誓わせてください!」
「は?」
フィアナの目が点になる。まあ、無理もないだろう。
国王の姿すら絵姿や遠く豆粒のようなサイズでしか目にしない市井のひとびとが、側近の顔なんぞいちいち覚えているわけもない。それに、まさか自分の店の前でみっともなく倒れていた酔っ払いが、この国の宰相とは夢にも思わないだろう。
「あなたが、宰相?」
「はい」
「この国の?? 氷の宰相閣下って恐れられている…?」
「そのあだ名は、甚だ不本意ではありますが」
にこにこと答えるエリアスに、フィアナが唖然とする。一拍置いて、彼女は「えええええぇぇぇぇ!?!?!?!」と、盛大に叫び声をあげたのだった。