「……可能な限り、経費を切り詰めるように。本年もそうご指示されると思い、先んじて式次第の簡略化を図りました。お気に召しませんでしたか?」

 探るように見ながら、若干の嫌味を織り交ぜつつ儀典長が答える。するとエリアスは珍しく――もっとも、大臣や文官たちにとっては、だが――ムッとしたようにわかりやすく表情を変えた。

「式の行程にはひとつひとつ意味が込められているのだと、貴方に幾度となく伺いました。
――経費を抑えるよう要請はしてきましたが、歴史や伝統を軽んじる意図はありません。行程を削ることで式の意味が変わってしまうなら、削るべきでないと私は考えます」

「で、ですが、昨年は最後まで渋い顔をされていたではありませんか」

 思わず口をはさんでしまって、男は後悔をした。エリアスの美しくも凍えた眼差しが、男を映したからだ。

 この瞳が苦手だと、皆が口をそろえる。言い訳も甘えも、すべてをさらけ出して暴いてしまう。そんな恐ろしさがあるのだと。

 だが、エリアスは男を一瞥しただけで、静かに首を振った。