「まあ、それで倒れちゃったら意味ないんだし、今度からはあそこまで溜め込む前にうちの店に来てくださいよ。いいお酒と料理を用意して、待ってますから」
「フィアナさん!」
立ち去りかけたフィアナの後ろ手を引き留める。「え?」と戸惑う彼女の手を、エリアスはキラキラと輝く美貌で見上げた。
「本当に、なんと申し上げたらいいか……貴女は私の前に舞い降りた、救いの女神です」
「はい?」
「貴女は倒れていた私を救ってくださったばかりか、昨日までの私を救い、さらには今この時より先の私も救ってくださいました。貴女の言葉がなければ、私は羞恥心と罪悪感とを抱え込み、また鬱々とした日々を過ごしていたことでしょう」
「た、助けになったのなら、なによりですが……」
「なにより!!」
がっとフィアナの手を両手で包み込み、エリアスはぐいと身を乗り出す。そして、ことごとく引いた様子のフィアナに、熱っぽく語りかけた。
「見ず知らずの人間を助けたというのに、少しも恩着せがましいところがなく、むしろどうということもないという態度を貫く、その清廉さ。さらには相手を気遣い、なぐさめようとさえする慈悲の心。私は貴女に、胸を射抜かれました……!」