コロンをつけているのだろうか。ふわりと鼻腔をくすぐる優しい香りに、頭の芯が痺れていくようにクラクラと目眩がする。外にいるふたりに気づかれたくないのに、胸の鼓動は高鳴るばかりで、呼吸すらままならない。

 どうしよう。このままでは、気絶をしてしまいそうだ。

 胸が痛い。息が苦しい。早く、どこかに行ってくれ。

 早く、早く。この鼓動が、エリアスに伝わってしまう前に――。

「行きましたか」

 ほっと呟いて、エリアスの手が緩む。途端、フィアナはふにゃりとその場に崩れ落ちた。

「え? あ、え!? フィアナさん!?」

 驚いたエリアスが、慌ててフィアナを支えて柱の陰から外に出る。それでも、床にペタンと座り込んでしまったフィアナに、エリアスはオロオロとうろたえた。

「ど、どうされましたか? まさか、あまり体調が優れませんでしたか……? どうしましょう、早く医者を……」