「いえいえ。さすが、宰相様は私たち町人のことも色々考えてくれているんだなあって、なんだか見直しちゃいました」
「ああ、やめてください。今のなし! 全部なしでお願いします!」
両手で顔を覆って、エリアスがそっぽを向く。銀白の髪から覗く耳がほんのりと赤く染まっているから、どうやら本気で恥ずかしがっているらしい。
(変なエリアスさん)
照れている姿が物珍しくて、フィアナは自然と笑ってしまう。
こういうエリアスさんは、可愛いなと。心の隅っこで、そんな感想を抱いたときだった。
「っ! 隠れましょう!」
「え? なっ、むぎゅ!?」
ぐいと手を引かれ、気が付いた時には、フィアナはエリアスに体を包み込まれるような形で、石の柱の陰に押し込められていた。
(な、な、なーーーー……っ!?!?)
「すみません。少々、堪えてください」
吐息のような微かな声で、エリアスが囁く。その距離の近さに、耳元に響く息遣いに、フィアナの心臓は跳ね上がった。