「先人の紡いだ歴史を引き継ぎ、ここに新たな歴史を刻む。――その瞬間を、貴女にもお見せしたかったんです」

 天井を見つめるエリアスの瞳は、きらきらと輝いていた。それはきっと、クリスタルの光の反射だけが理由ではないのだろう。

 少し考えてから、フィアナは視線を天上絵に戻した。

「エリアスさんだって、歴史の立派な一部じゃないですか」

「私が、ですか?」

 きょとんと首を傾げ、エリアスがこちらを向く。得意げに頷き、フィアナは続ける。

「メイス国が始まって以来の、最年少の宰相閣下。シャルツ王の右腕として王国を支え、穏やかであたたかな治世を成し遂げた。後の歴史書に、そう記されるんじゃないですか」

 どうだ、と彼を見上げれば、エリアスはぱちくりと瞬きした。そして、にこりと笑った。

「そういう意味で仰っているなら、フィアナさんも同じですよ」

「いえいえ。私たちみたいな一般庶民は、十把一絡げみたいなもんですから」