それなら、わざわざこんなところに上ってこなくても見られたのではないだろうか。そう疑問に思いながら、エリアスの隣に並ぶ。そして息を呑んだ。
そこには描かれていたのは、まさしく天国だった。透けるような純白へと連なる青空には、祝福の笛を吹き鳴らす無数の天使たち。そこに至ろうとするものを優しく導くような、美しい女神。天上の歌声を表現したかのような、無数の煌めき。
そう。下から見上げた時には気づけなかっただろうが、ところどころに小さなクリスタルのようなものが嵌めこんである。それが階下からの光に反応して、きらきらと輝きを放っているのだ。
「この聖堂が出来た当初、200年前の技術だそうです」
横に並んで上を見上げながら、エリアスは話した。
「手間もコストもかかるこの技法は、今ではほとんど失われてしまいました。しかし、この聖堂を修繕するにあたって、かつての姿を取り戻すために多くの人々が知恵を絞り、いくつもの文献を読み解いて、こうして今に蘇らせたのです」
「それは……」
ロマンがありますねと。そんな風に相槌を打とうとして、フィアナは言葉を飲み込んだ。どんな答えをしても、薄っぺらくなってしまう。そんな気がした。