むすりと唇を突き出し、ふてくされるフィアナ。すると、くすりと小さく笑みを漏らしてから、エリアスがぽんとフィアナの頭に手を置いた。

「すみません。あんまりフィアナさんが可愛らしいので、少しはしゃぎすぎました。機嫌を直してください。ね?」

「…………」

 ぽんぽんと頭を撫でながら、優しいまなざしで顔を覗きこんでくるエリアス。これではまるっきり、へそ曲がりの子供とそれを宥める大人の図だ。

 どうにも拗ねているのが決まり悪くなって、フィアナはすくりと立ち上がる。そして、そっぽを向いたまま妥協した。

「……今日のことは、誰にも見られていないのでノーカウントとします」

「はい。いつか結婚式で大勢の方に祝福されながら、一緒にリベンジしましょうね」

「だから、なんで私とエリアスさんが結婚するのが前提なんですか」

 いつもの調子に戻って、フィアナはため息を吐く。そんな彼女に、エリアスは嬉しそうに欄干に歩み寄って天井を指さした。

「それよりも、見てください。これを、フィアナさんにお見せしたかったんです」

「天井……?」