階段を上り終えた先。そこは上から聖堂内を一望できる場所になっている。
そんなせっかくの絶景スポットに連れてきてもらったというのに、フィアナは隅っこで小さくなって項垂れていた。
「お姫さま抱っこ……初めてだったのに……」
「ふふふ。フィアナさんの初めてを頂いてしまったなんて……。恐れ多くて、顔が緩んでしまうのが止められませんね」
言葉の通り、しまらない笑みをゆるゆると浮かべるエリアス。今日も今日とて、せっかくのイケメンが台無しである。
「私、初めてのお姫様抱っこは結婚式でしてもらうのが理想だったんですよ。なのに、何でもない日ですし、エリアスさんですし……。せっかくの私の夢が……」
「そうでしたか! 気づきませんで申し訳ありません。ちょっと司祭と話をつけてきます。今日という日を、私たちの結婚記念日にしてしまいましょう」
「隙あらば娶ろうとするのやめてくれません!?」