数分置きにボケないと会話もできないのだろうか、このひとは。やれやれと首を振りつつ、「……それに」とフィアナは続けた。
「口ではあーだこーだ言ってますけど、エリアスさんがボロボロになって、身を削って仕事をしているの知ってますから。そんな姿を見ちゃったら、『氷の宰相』だなんて、迂闊に呼べませんよ」
「フィアナさん……」
美しい宰相は、虚を衝かれたように目を瞠った。しばし、ぽかんとフィアナを見つめていた彼だったが、ふと繊細な蕾が静かに綻んでいくような、愛おしげな表情を浮かべた。
「……そんな貴女の優しさに、私は惹かれたのでしょうね」
「え、なんて言いました?」
「いーえー。今日のフィアナさんも大天使な女神すぎて、生きているのがしんどいと呟いただけですよっ」
「うわっ、聞き返さなきゃよかった。ていうか、大聖堂の螺旋階段を登りながらその発言は、神様に失礼じゃないですか」
「仕方ありませんよ。私はすでに、フィアナさん教の一員ですから」
「変な宗教立ち上げないでくれませんかね!?」