「ただ、仕事をしている時の私は、どうにも温かみに欠ける人間のようでして。フィアナさんには、あまりそうした姿をお見せしたくないと思っていたのです」

 ああ、そうかと、フィアナは納得をした。

〝氷とか、鋼とか、好き勝手言いますけど……。わたしだって必死なんです……、がんばっているんですよ……〟

 エリアスを拾った夜、彼はヨレヨレに酔い潰れながらそんなことをこぼしていた。翌朝にも氷の宰相と呼ばれるのは不本意だと話していたから、周囲からそのように見られてしまっていることを、彼なりに気に病んでいるのだろう。
 
 気落ちするエリアスは、まるで大型犬がしょんぼりとうなだれているようだ。まったく、このひとは何を今更。そんな風に呆れながら、フィアナは肩を竦めた。

「あのですね。普段の印象が強すぎて、ちょっと『氷の宰相』の顔を見せられたくらいじゃ、エリアスさんの評価は覆りません。わたしの中でエリアスさんは、残念イケメンな面倒くさいひとのままです」

「私、面倒くさいんですか!?」

「そこは驚くとこじゃないですよね!? そういうとこですよ、面倒くさいの!」