「……驚きました。まさか、仕事で城下へ来ている折に、フィアナさんにお会いするとは」

 その声があまり嬉しそうではなくて、違和感を覚えたフィアナは前を見上げた。いつもの調子の彼ならば、「これは運命の出会いですっ」だとか「恋のキューピットの悪戯ですねっ」だとか、――まあ、セリフの内容はいったん置いておくとして、とにかくそのようにはしゃぎそうなものだが。

 少し考えてから、フィアナは視線を落とした。

「すみません。お仕事、邪魔しちゃいましたね」

「ちが、ちがうんです! フィアナさんに会えたのは、すごく嬉しいんです!」

「は、はあ」

 ばっと振り返って必死に釈明するエリアスに、フィアナはその場でびくりと立ち止まった。ていうか、狭いらせん階段の途中だから、そうやって身を乗り出されるとどうしても距離が近くなってしまう。

 本当に、このひと顔だけは綺麗だな。焦った顔を見上げながら、場違いにもそんなことを思っていると、エリアスは珍しく困ったような笑みを浮かべた。