「ところで、フィアナさんはどうしてこちらに? グレダの酒場からこの聖堂は、そこそこ距離がありますが」
「たまたまですよ。キュリオさんに忘れ物を届けにいった帰りなんです」
「なるほど。そういえば、キュリオさんのお店はこの近くでしたね」
頷いてから、エリアスはカッと目を見開いた。
「そうか、その手がありましたか……!」
「一応言っておきますけど、エリアスさんが忘れ物しても届けませんからね。私みたいな一般市民は、お城になんか入れないんですから」
「衛兵に入城許可の申請を出しときますよ?」
「めちゃくちゃ確信犯じゃないですか。そんな下心満載な忘れ物は没収です!」
半目になってフィアナが抗議すると、エリアスは声を上げて笑った。だが、その声はふいに途絶えてしまう。急にどうしたのだろう。そう首を傾げるフィアナに、前を向いたままエリアスが口を開いた。