「お披露目式典のための事前視察??」
薄暗い聖堂の中、エリアスの後をついて細い階段をのぼりながら、フィアナはオウム返しに問いかける。すると、エリアスはにこにこと頷いた。
「はい。こちらの聖堂、しばらく修繕工事を行っていましたでしょう? それが、先日ようやく終わりましたので、陛下の名のもとで式典が執り行われるのです」
(そういえば、そんなお知らせが張り出されてあったかも)
視線を泳がせながら、フィアナは思い出した。たしか街の中央広場の掲示板に、この日は式典のため招待客以外は立ち入り禁止と、でかでかと張り出してあった気がする。
「じゃあ、エリアスさんがさっき警備兵のひとと話していたのって」
「はい。式典当日の警備体制について、警備隊長と確認をしていたのです。王家と所縁の深い聖堂ですので慣れているとはいえ、万が一のことがあってはいけませんから」
「そういうことだったんですね……」
とりあえず、武装したひとが立てこもっているとか、殺人犯が逃げ込んでいるとか、そういった危険な状況ではないらしい。ほっとして、フィアナは胸をなでおろす。……そんなフィアナの様子に、前をいくエリアスはくすくすと笑いを漏らしていた。