(……エリアスさんなら、やりかねないかも)

 ごくりと息をのみ、フィアナはそろりと退却の一歩を踏み出す。なにはともあれ、相手は仕事中だ。第六感を頼りにエリアスがこちらを探しに来る前に、ここは早く立ち去るのが正しい選択だ――。

「フィーアナさんっ」

「ミギャア!?」

 背後から響いた声に、フィアナは文字通りその場で飛び上がる。すると、フィアナを驚かせた張本人であるエリアスは、毛を逆立てて警戒するフィアナをほのぼのと見下ろした。

「フィアナさんは驚き方もネコさんみたいで可愛いですねえ……。今度から声を掛けるときは、背後から突然にしましょうね」

「いやですよ、そんな心臓に悪い話しかけ方! よ、よく私に気が付きましたね」

「もちろん! 私がフィアナさんに気づかないことなどありえません。たとえ視界に入ったのが髪の毛一本だとしても、貴女に気づいて追いかけてみせます!」

「こわっ! その宣言こわっ!!」

 本当にやりかねないのが、エリアスの恐いところである。