(ていうか、荒ごとならプロに任せればいいのに……。エリアスさん、絶対に剣の腕とか強くないでしょ……)

 やきもきして、自然と壁を掴む手に力が篭る。

 あのエリアスが、襲ってきた暴漢を撃退できるだろうか。答えは否! 剣を手に立ち向かう姿など、とても思い浮かばない。それどころか、下手にフィアナを庇おうとして「あーれー」と斬られている様ばかり容易に想像できてしまう。

 何があったのかは知らないが、弱いなら弱いなりに、もう少し身を隠せる場所に移動して欲しい。勝手にエリアスを武術オンチと決めつけたフィアナが、そのように念じた時だった。

「ならば、ここは……」

 警備兵と話し込んでいるはずのエリアスが、ふと顔を上げた。ばちりと視線が合いそうになって、フィアナはばっと壁にはりついて身を隠した。

 気付かれてはいないはずだ。完全にこちらを見るより先に隠れたし、そもそもほんのちょっぴりしか顔を出していない。これでフィアナに気づいたのだとしたら、もはや野生の勘の域に入っている。