――出会いの時は、唐突に訪れた。
「フィアナさーん! こんにちはー!」
明るく店の戸をくぐって現れたエリアスに、フィアナはしばしぽかんと口を開けた。
「エリアスさん!? あれ、どうしてランチタイムに!?」
「今日はお休みをもぎ取りまして。なので、お昼の時間から来ちゃいました」
ほくほくと嬉しそうに、エリアスは座り慣れたカウンターの左端席へと向かう。だが、その椅子を引こうとしたところで、くいと眉を上げた。
「……おや?」
「あ、エリアスさん、その席は」
フィアナが説明しようとしたその時だった。
ばたんとトイレの戸が開いて、エリアスのお気に入りの席に座っていた先客――マルスが姿を見せる。当たり前のように席に戻ろうとした彼は、椅子の前で立ち尽くしこちらを眺めるエリアスの姿に気づき、足を止めた。
「…………あ」
何かを察したらしいマルスが、ちらりとフィアナに視線をやる。だが、フィアナがそれに答えてやる前に、マルスの視線を遮るようにエリアスがさりげなく間に入った。
「こんにちは」
まるで真っ当な大人のように、エリアスはにこりと微笑んでそう会釈したのだった。