それは恋かと問われれば、断じて違うと首を振る。けれども、いまエリアスとこういう掛け合いができることが、面倒くさくて、ちょっぴり嬉しい。甚だ不本意ながら、そんな風に思ってしまう程度には、エリアスに気を許してしまったようだ。

「あ……ああ……そんな……女神……。やはりここに墓を、いえ、かくなるうえは、私が墓になるしか……」

「あれ、もう酔ってるんですか。じゃあ、エールも賄いも必要ありませんね」

「うわぁぁぁあ、嘘です、嘘です! 墓なんか建てませんし、墓にもなりません! 待ってください、フィアナさーん!」

 わあわあ騒ぎながら、ふたりは店の中へと消えていく。

 ぱたんと閉じた扉には「閉店」の文字。――けれども、賑やかな夜は、いましばらく続いたのだった。