「あの。一応聞きますが、人のうちのまえで何拝んでいるんですか」

「まさか……、まさか、こんなにお可愛らしいフィアナさんの姿が拝めるなんて思わなくて……。いけません。尊すぎて、生きているのがしんどいです。ここに墓を建てよう……」

「家の前にお墓が建つなんて絶対嫌ですし、少しデレたくらいで死なないでくれませんかね!!?」

 ドン引きしてフィアナは抗議するが、エリアスは声もなく涙を流しながら、両手を合わせて何かを拝んでいる。本当に、イケメンというアドバンテージをことごとくどぶに捨てていくスタイルの男である。

 どっと疲れを感じたフィアナは、面倒くさくなって立ち上がった。

「もう、いいです。気が済むまでそうしていてください。私、なかで待ってますんで」

「あ、あぁ! すみません、フィアナさん!! 長くお引止めしてしまいまして……。気持ちに折り合いがついたら帰りますので、私のことは気になさらないでください」

「何言っているんですか。エリアスさんも入るんですよ、店の中に」

 くいと後ろを指し示せば、エリアスが不思議そうな顔をする。それに、してやったりといった笑みを浮かべて、フィアナは腰に手を当てた。

「賄いの残りと、一杯のエールくらいなら私でも出せます。……食事、まだしてないんですよね? よかったら、寄って行ってください」

 私からのねぎらいです、と。フィアナはそっと、心の中で付け足す。